Interview

#02 下田昌克

画家として雑誌や書籍、舞台美術をはじめ、詩人の谷川俊太郎との絵本の製作や10年以上作り続けるキャンバス生地で作る恐竜の作品が<COMME des GARÇONS HOMME PLUS>のヘッドピースとして起用されるなど、幅広く活躍するアーティスト下田昌克さん。

渋谷と原宿の間に位置する、デザイン事務所も多い住宅街にあるマンションが下田昌克さんのアトリエ。以前は隣の部屋が自宅だったが、現在は2つの部屋をアトリエとして使用している。眺めの良いベランダにはハンモックもあり、渋谷区とは思えないゆったりとした時間が流れている。

アトリエには大きなテーブルの上にはミシンが置かれ、窓辺に恐竜作品が飾られている。壁や棚は、おもちゃや本、ポスターが所狭しと並べられ、インタビュー中、お気に入りである「スターウォーズ」のライトセーバーを披露してくれた。終始和やかに微笑む下田さんに自身の活動について伺った。

画家として活動を始めたきっかけを教えてください。

子どもの頃から絵を描くことが好きでずっと描いていました。小学校ぐらいの時は上手だと言われていたのだけど、高校の美術学校に行ったら自分より上手な人がたくさんいて。デッサンも上手く書けなかったから勉強をしなくてなって、しばらく絵と離れた時期がありました。

20代の頃に初めて海外旅行に行って、日記を書くのと同じ感じで、海外で出会った人のポートレートを色鉛筆で描いたら現地の人が誉めてくれて。風景ってポストカードを買ったほうが良いなと思っていて。でも人の顔を集めていくと、一枚だとその人なんだけど、集めていくと自分の周りの景色みたいな気がして、人を描くのいいなって思って楽しくなって描いていた感じです。気づいたら2年間も海外をブラブラしていました。

帰国する頃にはポートレートが250枚ぐらいありました。帰国後にその絵で週刊誌から連載の依頼があって、絵の仕事を始めることになりました。それでイラストの仕事がちょっとずつ広がっていったのですが、それでも生活ができるわけでもなくて、就職先を探したりもしました。30歳になると急にアルバイトの求人も減ってしまって、どうしようかなと思って。イラストの仕事で出会う人が面白くて、デザイナーや小説家、編集者とか。そこで改めて絵を描いていこうと決心してアルバイトも辞めてしまいました。消去法ですかね(笑)。

恐竜の作品は、2011年に上野の博物館で開催されていた恐竜博で、恐竜の骨格や標本を久しぶりに見て、凄く恰好良くて。買い物する気満々でミュージアムショップに行ったら欲しいものが何もなくて、家に帰って絵を描くためのキャンバスの布を使って恐竜を作り始めていました。絵を描いている時とは違う、うお~って楽しい感情が湧きがって来て(笑)。それから自分が被るものとして、自分が身に着けるために、ずっと作り続けています。

作品を制作するうえでのインスピレーション、大切にしていることや心がけていることはありますか?

元々テーマとかないし、物欲から作り始めたんで自分が欲しいものを作っている感じです。見る側に対するメッセージなんてほんとかけらもないですね。人に見せるという意識はありますが、自分が楽しむため。あとは、被るとプロテクターみたいで守られているような、外の世界と遮断されるような感覚。子供の頃に初めてウォークマンをしたときに、外音が遮断されて、急に映画の世界みたいな、目に見える世界と耳から聴こえる世界が違う。自分をプロテクトするみたいな感覚?ああいう気持ち良さもあったかもしれません。

アーティストとして、生活者として、暮らしにおけるアートの存在をどのようにお考えですか?

価値のあるものとか置けば恰好良いんでしょうけど、自分の周りにはガラクタばかりですよね。飾っているソフトビニール人形も主役級のものは少ないし。ちょっとおかしい造形が好き。自分が制作しているものとどこか繋がっているのかもしれません。

このキューバで見つけたシルクスクリーンで刷られた映画のポスターは、フランシス・コッポラの「ゴッド・ファーザー」なんですが、全然分からないでしょ?日本人の感覚ではわからないヘンテコな感覚が好きですね。

あと、色があったり変化があったり、成長したり、そういう変化のあるものが楽しいと思うんです。そういうものが新しいものを制作する時のヒントになっているかもしれません。

作品をどう楽しんでいただきたいですか?

恐竜は元々自分が身に着けるために作り始めたのですが、確実に今は人に見せるために作っているものでもあって。ただ何を伝えたいというのは特には無くて、すごーいとか楽しかったとか自分にもできそうとか。何かのきっかけになると充分です。(笑)

ご自宅にはたくさんのアートを飾られていますが、その中でも特に思い入れのあるアート作品やアーティストを教えてください。

ずっと好きで飾っているピカソの写真集。デビッド・ダグラス・ダンカンというカメラマンが晩年のピカソを撮った写真集で、ピカソが孫と遊んでたり、家族とものを作っていたり、絵を描いてたり。ピカソの日常生活の様子が収められたもの。ピカソっていつも怖い顔して写ってるじゃない?ハンサムだけど。でもここに収められたピカソは楽しそうな生活していて、凄く恰好良いんですよね。この本を見ると、なにか作りたくなります。ハードカバーじゃない雑誌のような作りも好きで、古本屋で見かけると買ってしまいます。ピカソの絵も好きだけど、ピカソの顔が好きです。

2021年7月9日(金)からスタートする"Life in Art Exhibition"を、どのように楽しんでもらいたいですか?

恐竜を10年前からずっと作ってたんですよね。一番大きいのは4mくらいあるのかな。それもこの6畳の作業場でミシンかけて、できたものから寄せ集めて山積みにしながら作って。初めて恐竜の作品で展覧会をしたとき、嬉しいという気持ちと同時に、部屋にこもり続ける、自分の中の闇のような部分が、どっと吐き出されている様で、なんかちょっと気持ち悪い!みたいな。この気持ちはたぶん僕だけだと思うんだけど。

久しぶりにまとめて展示する機会でもあるので「なにコレ!?」って、記憶に残るようなものが見せられるといいなと思っています。

photo : Shinsui Ohara,
interview : Megumi Kobayashi, Tadatomo Oshima
Interviewed in June 2021.

下田昌克しもだまさかつ

1967年兵庫県生まれ。絵描き。1994年から2年間、世界の旅先で出会った人々のポートレイトを色鉛筆で描き始める。2011年よりプライベートワークでハンドメイドの恐竜の被り物や立体物をつくり始める。著作に「恐竜人間」(パルコ出版)「恐竜がいた」(スイッチ・パブリッシング)など。

過去のインタビュー&特集ページ