研究者やアーティストと共に、銀座の地下街を探索。不思議な建物や土地のこと、
私たちが暮らしている場所について深掘りしながら文化への興味関心を「拓く」セクション
想像力を広げて目の前の風景を自分らしく見つめ、感覚を拓いていくことも「アート」となりえます。
都市のインフラや構造を探求する写真家・大山顕さん、人工物の中に自然を見出すデザイナー・本多沙映さん、建築とアート・漫画の領域を行き来する建築家・座二郎さんをリサーチャーとして招き、銀座・有楽町・日比谷の街を新たな視点で再発見することを目的に、この街特有の魅力を探求するセクションです。
ワークショップやトークイベントも開催予定です。あわせてぜひご参加ください。
大山顕
写真家/ライター。1972年生まれ。写真家・著述家。立教大学社会学部講師。代表作に『撮るあなたを撮るわたしを』(2024年 講談社)、『工場萌え』(石井哲人の共著 2007年 東京書籍)、『新写真論スマホと顔』(2020年ゲンロン叢書・2023年日本写真協会学芸賞受賞)、『立体交差』(2019年 本の雑誌社・2020年土木学会出版文化賞)、など。X:@sohsai
本多沙映
デザイナー。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、IDÉEを経て渡蘭。2016年Gerrit Rietveld Academie卒業。2021年にオランダから日本に拠点を移し、国内外で自主制作作品を発表するほか、コミッションワークも手がける。作品はオランダのアムステルダム市立美術館、アムステルダム国立美術館、アーネム博物館にて永久所蔵。
座二郎
建築家。1974年生まれ。早稲田大学理工学研究科建築学専攻修士課程修了後、大手ゼネコンに勤務。通勤電車のなかで漫画を描き始める。ビッグコミックスペリオールにて『RAPID COMMUTER UNDERGROUND』をWEB連載。2019年リビングに屋根のない自邸を設計。2021年退社・独立。グラフィックで空間と平面の中間領域を追求する。
course #1
大山顕 ✕ 本多沙映
写真家の大山顕さんとデザイナーの本多沙映さんと一緒に街歩きをしました。「地下にも地形がある」と語る大山さん、自然を模した人工物やフェイクについて研究している本多さん、そんな2人の視点からは銀座の地下がどのように映るのか、一緒に探ってみましょう。
音声を最初から聴く
2人の目に留まったのは、高架下にある店先に飾られている人工植物。本多さん著『人工植物門』の知見を紐解きながら、地下や高架下にある人工植物の生態系をめぐります。
ゆるやかな坂が続く地下通路に現れる謎の階段。天井に埋め込まれてる何らかの構造物を避けるためにこの階段つくられたのではないか?と大山さんは推理します。
有楽町駅近くの地下にぽつりとトンボが留まっていました。「このトンボはもしかしたら皇居の杜から来たのかもしれない」。人工的な空間にも自然の気配を読み取ることができます。
雨漏り対策につくられた構造物。「このテープや身の回りにあるもので補修している感じが面白いですよね。地上ではこんなやり方はしない」と本多さんも興味津々。
休憩スペースに置かれた人工植物の造形について詳細に語る本多さんに対し、「どうして都営線に人工植物が多いのか?」という問いを投げかける大山さん。目的や用途によって自然の樹木と人工の樹木の配置が変わるのでしょうか。
勢いよく地下水が流れる側溝には、まるで鍾乳洞のような体積物が付着しています。「コンクリートに含まれる石灰が酸性の雨によって溶け出しているのかもしれない」。地下の人工的な空間に自然物が流れ込んでいます。
自然植物の上に花の写真が飾られています。「まるで現代アートみたいな空間!」と驚く本多さんに、写真は究極の人工自然物ではないかと、大山さんから興味深い写真論が展開されます。
明治期につくられたレンガ製の高架下には、雨漏りで育ったシダ系の植物が。「ここには雨漏りに交じって有機物が流れ込んでいるかもしれない」と推測する大山さん。〈水〉を通して地下空間の外側を想像できる、興味深いリサーチになりました。
course #2
座二郎 ✕ 大山顕
建築家の座二郎さん、写真家の大山顕さんと一緒に銀座地下道を街歩きをしました。「この地下道をつくった人たちの顔が見えてくる」と話す座二郎さん、「地上では見えないルールや仕組みによって地下空間が形作られている」と語る大山さん。そんな2人の視点からは銀座の地下がどのように映るのでしょうか?
音声を最初から聴く
日比谷の歴史ある高架下をめぐります。「ここのもつ焼き屋は日本最古級の高架下居酒屋じゃないかな?」と、高架下建築の写真集を出している大山さんの含蓄あるトークがさく裂します。
地下道に入ると、おもむろにメジャーを取り出す座二郎さん。「天井の高さや階段の幅によって地下道がつくられた年代がある程度わかる」。普段は見過ごす風景も、高さや距離を測ることでその歴史や背景が見えてくることがあります。
この防火扉は素晴らしい!と感動するお2人。お話を聞きながら歩くと、地下道のインフラが魅力的に見えてくるのが不思議です。
「こういう収まりをみるとスケッチしたくなる」と喜ぶ座二郎さん。地下街と地下道という、所有者も役割も異なる空間が接続される箇所に、施工の工夫や苦悩が刻まれています。
帝国劇場の下に、ガラス窓に仕切られたタイル張りの柱があります。どうしてこんな造形物があるのか?「僕の予想はね、実は…」とお二人のユニークな仮説が展開されます。
「ここの箇所がペニンシュラと地下道の敷地境界線ですね。見た目の意匠は同じですが、実はここから構造が違う」大手ゼネコン会社に勤めた経験のある座二郎さんには、壁の中が見えているのかもしれません。
KIOSKから空調の室外機のダクトが出ていることに注目し、「この地下道はガンダムでいうコロニーと同じなんだ」と語る大山さん。地下空間はいったい外なのか?内なのか?
日比谷OKUROJI入口には、新幹線(左側)と在来線(右側)の異なる線路の柱が見えます。この空間にある歴史や背景を語り合いながら、「まだまだ話したりない」と笑うお2人。それほどこの地下空間は知られざる魅力にあふれていました。
リサーチャー3人と街歩きするイベントを開催します。
街歩き後は、日比谷の高架下で100年以上の長い歴史とその痕跡を残しながら街と共存する『日比谷OKUROJI』で、銀座・日比谷の地下や高架下の魅力を語りつくします。