お店の紹介、お店をはじめるきっかけを教えてください。
福岡市の中心地から近い個性的なショップが集まる薬院エリアにあり、今年で20年目になります。
築60年の古いビルの2階で北ヨーロッパのヴインテージ家具、照明、生活道具、国内作家のもの、オリジナルアイテムなど、有名無名問わず店主自ら1点ずつ買い付けています。
時代を超えて古さを感じさせず愛され続けられるものや使う人の生活に寄り添ってくれるもの、気分が上がるものをセレクトしています。
お店を始めたきっかけは、雑貨ショップの企画販売をしていた時代に北欧を旅する機会があり、その時初めて北欧のヴィンテージに出会い今まではイギリスやフランスの古いものには触れていたのですが、それとは全く違う北欧のモダンな家具や道具にとても惹かれました。
一旦帰国したものの北欧の街並みや空気感が忘れられず、数ヶ月後に再度北欧行きを決め北欧で見つけてきたものを日本でも見て欲しいという思いで自宅近くの古い一軒家を借りました。
そして友人のみ来てもらえるプライベートの空間を作ったのが始まりです。
友人だけが来てくれるような細々とした形態だったのですが、ある日雑誌『Olive』からの取材の依頼があり、その時はかなり驚いたのですが(どなたかが紹介してくださったようで)学生時代から大好きだった『Olive』からの取材依頼ということで深く考えずに取材を受けることになり、当時は店舗の名前も無かったので慌てて取材前日に店名を決めることに。
それからは買い付けてきたものの在庫がなくなったら、買い付けに行きということを繰り返して気がついたら20年が経ち現在に至ります。
どのようなヴィンテージアイテムを取り扱っていますか?
北ヨーロッパの家具、照明、生活道具、テキスタイルをベースに国内外作家のもの最近はオリジナル制作にも力を入れています。
有名作家のアートピースも好きなのですが、当時のプロダクトものに惹かれます。
存在感はあるけど生活空間にすっと馴染んでくれるもの、そこにあるだけで気分が良くなるもの、リラックスできて温かな気持ちになるもの、長く使うことで愛着が湧くものを。と思いセレクトしています。
衣食住全てにおいて店主がいいなと思うものを揃えています。
古さを感じさせない変わらない魅力のあるもの、消費するのではなく次につなげていけるものを、これからも扱って行きたいと思います。
影響を受けたデザイナーや、思い入れのあるアイテムを教えてください。
買い付けの合間の楽しみのひとつがその土地の教会に行くことなのですが、特にデンマークのコペンハーゲンにある「グルントヴィー教会」は光が降り注ぐ美しい空間にコーアクリントのチャーチチェアが整然と並んでいて自然光を浴びてとても美しく、買い付けで疲れていてもすっと身体が軽くなって、気持ちが整う場所なんです。
そこに並んでいる沢山のチャーチチェア、調度品、木製のオルガンなどがどれも簡素だけどデザインが美しく私がペーパーコードの椅子を好きになったのもこの教会の椅子がきっかけです。
コーアクリントのチャーチチェアと同じ匂いのするハンス J ウェグナー、ボーエ モーエンセンなどのペーパーコードの椅子もいくつか愛用していて大好きな作家です。
どんなテイストのインテリアにもすっと馴染んでくれるので長く使えば使うほど愛着が湧いてくる椅子でデザイン違いで持っていて、その日の気分で使い分けています
お店の近くにお薦めのお店や場所があれば教えてください。
TRAMのある薬院は個性的なショップが集まっていて、高級住宅街も近くインテリアショップ、生活雑貨店などがあり、ちょっとスーパーの帰り道に買い物が出来たりと落ち着いた雰囲気で暮らしやすいエリアになります。
薬院という場所は昔、薬草園があった場所で薬草を使って治療する場所があったそうです。
近くには福岡市動植物園もあり緑豊かでゆったりとした空気が流れています。
TRAM近くのショップもフランス、オランダ、ベルギー、イギリス、北欧など、アンティークショップやヴィンテージショップが多いので短時間で色んなショップを周り見比べることも出来るので何かしら欲しいものが見つけやすいと思います。
旅行で来られた方に良く言われるのですが、福岡はショップ同士が近いので買い物がしやすいし、知り合いのショップを紹介し合ったりするので短い滞在期間でも楽しめるようです。
今回、Modernism Galleryに出品いただく逸品について教えてください。
Signe Person-Melin / Cup & Saucer, Spoon, Coffee Pot, Tea Pot & Warmer
スウェーデンの女性陶芸作家、プロダクトデザイナーであるシグネ・ペーション・メリン。
ストックホルム国立芸術大学デザイン大学で陶芸や彫刻を学び、1950年代から陶芸家としてもの作りを始めました。
1951年にはスウェーデンのマルメに自身のアトリエを設立。BODA、BODA NOVA、Rörstrand、GUSTAVSBERGなどでシンプルで生活に根ざした日常使いの作品を多数制作しました。
彼女の作品は道具として美しく温かく清らかなオーラを放っています。
この逸品との出会い、そしてあなたにとってどこがモダンデザインの逸品なのか教えてください。
雑貨店の企画販売をしていた頃に有給を使い北欧へ初めて訪れたのが2001年の冬。
1週間でフィンランド、スウェーデン、デンマークの各都市をまわりました。デンマークコペンハーゲンに滞在していた時に電車で30分ほどでマルメという町に行けることを知り、マルメのアンティークショップを数件見つけその時に初めてシグネの陶器やガラスの器を手に入れたのを覚えています。
当時はデザイナーやメーカーなど知識がまったく無く、形の美しさと道具として使ってみたいという思いでシグネの作品を手に入れました。
スウェーデンは北から南までいろいろな街を訪れたのですがシグネの作品は南スウェーデンのアンティークショップやセカンドハンドショップで良く見かけていて、後になって南スウェーデンのマルメにアトリエがあることを知りました。
このBODA NOVA社の耐熱シリーズは道具としての機能性と全く古さを感じさせないデザインの美しさもありますが、生活のシーンにさりげなく溶け込んでくれて何気ない毎日の営みを気分良くしてくれるところが魅力的で大好きな作品です。
今後目指していること、展望などありましたら教えてください。
ここ2年ほどの世界の状況の変化で、今まで外に向かっていた興味が、内側に向かい本当の意味で心地よい生活、仕事と暮らしのバランス、何が一番の優先順位かを考える方が増えたように思います。
いちばん目に触れる身近な家の中を整えることで家具や照明をもう少し心地良いものにと、見直す方が増えました。引き続き皆さんの理想の暮らしのお手伝いをしていきたいし、私自身がモダンなものとフォークロアーなもの、どちらも好きなので良い感じにミックスしたものをこれからもセレクトしていき、提案したいです。
もうひとつ、この1、2年の間に時間ができたので国内の職人の方に力を貸してもらいながらチャレンジしたオリジナルのアイテム作りが段々と楽しくなって来たので、今後もう少し時間をとって広げてみようと思っています。
〒810-0022 福岡市中央区薬院1-6-16 百田ビル202
tel 092-713-0630