お店の紹介、名前の由来、お店をはじめるきっかけを教えてください。
山梨県の最南端に位置する山間部の小さな町に店舗を構えています。
2015年4月、普遍的な価値の継承と新たな価値の創造をコンセプトとしたギャラリー・ショップとしてオープンしました。主にフィンランドのモダニズム期のヴィンテージファニチャーやプロダクトを取り扱っています。
もともと個人でデザインアーカイブの収集をしていたことがショップを始めるきっかけです。
尽きることがないモノへの情熱をお客様と共有できる時間が至福の時です。
どのようなヴィンテージアイテムを取り扱っていますか?
主にフィンランドモダニズム期のヴィンテージファニチャーやプロダクトを取り扱っています。
アルヴァ・アアルトやイルマリ・タピオヴァーラの家具、パーヴォ・ティネルの照明等、デザインアーカイブとしての側面の強いコレクタブルなアイテムをセレクトしています。
影響を受けたデザイナーや、思い入れのあるアイテムを教えてください。
取扱いデザイナーで言えばパーヴォ・ティネルの照明です。
素材を知り尽くしたパーヴォがデザインした照明は、金属の持ち味を生かした意匠性をデザインに落とし込んだエレガントさと光の演出効果とが見事にマッチしています。
モダニズムの影響を受けた以降は、これまで同様に真鍮を用いたラグジュアリーさを持ち合わせながらもシンプルにそぎ落とされ、より光の演出効果を重視したようなデザインへと変化していきました。
職人的な技量を必要とする工芸的な造形からより工業的な造形へと少しずつ推移していきながらも、器具からこぼれ出る光のはかなげな美しさや、素材に真鍮を用いることで生まれる光の増幅感は、いずれの時代にも共通している彼のデザインの特徴です。
お店の近くにお薦めのお店や場所があれば教えてください。
店舗の所在地は山間部の小さな町ですので特に何かあるわけではありませんが、店のすぐ近くにキャンプ場が数件ありますので、のんびりと田舎を楽しんでいただけると思います。
あとは車で45分ほどのところに芹沢銈介美術館と移築された芹沢銈介の家があります。自邸ではフィンランドのデザイナーYki Nummiのペンダント照明が使われており、気付いた時には思わず嬉しくなりました。
今回、Modernism Galleryに出品いただく逸品と、あなたにとってどこがモダンデザインの逸品なのか教えてください。
Alvar Aalto / X602 Stool and Table
アルヴァ・アアルトは、20世紀を代表するフィンランドの建築家でありデザイナー。オットー・コルホネンと共に「L-leg」と呼ばれる曲げ木技術を開発。国際的なモダニズムの思想をフィンランドに取り入れ、それを北欧の視点で解釈し建築や家具デザインに落とし込みました。アアルトの家具はミニマルアートを代表する作家ドナルド・ジャッドがコレクションしていたことでも知られています。
X-legはL-legの技術を発展させた扇状のレッグです。曲げ木のL-legの開発に成功し同じパーツを流用することでバリエーションの展開と量産を可能とした家具シリーズを生み出したアアルト。L-legを数個分つなぎ合わせたX-legは意匠的要素が強く、よりアアルトのクリエイターとしての創造性を感じることができます。
私にとってX602は、円形(X600)、四角形(X601)、六角形(X602)とあるシリーズの中でも最高にエレガント。テーブルは一般販売されておらず特注生産されていたものでアアルトのスタジオにも置かれています。スツールはマホガニートップ×アッシュレグのハイエンドモデルです。
Ilmari Tapiovaara / Domus Rocking Chair
イルマリ・タピオヴァーラは、フィンランドの家具デザイナーでありインテリアデザイナー。
アアルト、コルビジェ、ミースと錚々たるモダニストの元で経験を積み国際的な感覚を培いました。
タピオヴァーラが手がけた家具は、他に類を見ないプリミティブで独特な造形でありながらも独自性と普遍性とが共存した不思議な魅力に溢れています。
プリミティヴィズムとモダニズムとが融合したタピオヴァーラ特有の造形が何とも不思議な魅力を放っているドムスロッキングチェア。入手が難しく、手に出来る日を長年待ち望んでいた椅子という事もあって思い入れのある一脚です。
Yrjo Kukkapuro / 100G Floor Lamp
ユルィヨ・クッカプーロは、フィンランドの家具デザイナーでありインテリアデザイナー。イルマリ・タピオヴァーラに師事し、フィンランドでポストモダン運動に参加した唯一の人物です。人間工学に基づいた独自のアプローチを行う一方で生産プロセスからはモダニズム思想への踏襲も見られます。代表作のカルセリチェアはテレンス・コンラン卿が最もお気に入りの椅子であり世界一快適な椅子とも言われています。
100G Floor Lampは、ポストモダンの影響を色濃く受けるもモダニズム思想の踏襲も垣間見られるクッカプーロのデザイン。個人的にモダンデザインのインテリアの中にアクセントとしてポストモダンを加えるのが好きでこのフロアランプを選びました。
今後目指していること、展望などありましたら教えてください。
ヴィンテージ家具を主体としたデザインギャラリーです。
デザインアーカイブとしてのトップピースを後世に残す役割も担う立場としては、相応の機関や人に所有してもらうことも考えていかなければなりません。今後はアートマーケットへの参入やコレクターの育成、美術関係機関へのリリース等、これまで以上に力を入れていきたいです。
〒409-2102 山梨県南巨摩郡南部町福士15724
tel 0556-64-8130