お店の紹介、名前の由来、お店をはじめるきっかけを教えてください。
元々はオーダー家具屋として2010年にスタートし、もうすぐ12年になります。
現在はオリジナル家具「fundamental furniture」とヴィンテージ&ユーズド家具を扱う二刀流で、オープン当初からずっと私ひとりで運営しています。
お店を始めるきっかけというのは特にないのですが、ずっと家具に携わる仕事をしてきて培った自分の感性や理想を、形にしてみたかったというのがあったように思います。
「BUILDING」という店名については、何となく字面が良かったのもありますが、どんな高層ビルも必ず1階から積み上げて完成するという意味も含めて、少しずつ大きくなれたらという思いも込めました。
いまだに全然大きくなれていませんが(苦笑)。あとは店主(私)の身長にも由来しているとかしないとか・・・
どのようなヴィンテージアイテムを取り扱っていますか?
オープン当時はオリジナル家具に合わせるダイニングチェアと照明くらいのラインナップだったヴィンテージ家具ですが、今ではアメリカ・北欧・ヨーロッパ・日本と、国を問わず1950〜60年代のデザインをメインにセレクトしています。
また、ジャスパー・モリソンやブルレック兄弟など、現代のデザイナーのユーズド家具も扱っています。
ジャンルは特に絞っていませんが、必ず私のフィルターを通して美しい、良いと思えるデザインだけを扱うようにしています。また、コンディションにも厳しい基準を設けていて、日常使いできるグッドコンディションのものしか扱っていません。
影響を受けたデザイナーを教えてください。
ジョージ・ネルソンとポール・ケアホルムです。
ジョージ・ネルソンはイームズをハーマンミラー社に起用したことでも有名なデザインディレクターですが、彼の手掛けた壁面収納ユニットやモジュールシステム(一定の規格を元に様々なバリエーションを展開する様式)を採用したキャビネットシリーズやソファは、BUILDINGのオリジナル家具「fundamental furniture」を設計する上で非常に影響を受けています。
ポール・ケアホルムは私が家具を見るときに「美しさ」の基準としているデザイナー。
デザインされてから60年以上経った今も、ノスタルジーをまったく感じさせない完璧なデザイン。自然素材の使い方も非常に巧く、今でもケアホルムの家具が入荷するたびにひとりで唸っています。
お店の近くにお薦めのお店や場所があれば教えてください。
白金エリアは本当に物販のお店が少ないのですが、BUILDINGから徒歩5分くらいのところにある「YAECA HOME STORE」さんは、良い意味でBUILDINGとは違うセレクトのお店。
週末はYAECAさんのショッピングバッグ持ってBUILDINGに立ち寄られる方も多いので、白金のインテリアコースになっているみたいです(笑)。
家具のバイヤーを務められている林さんは、日本ではかなり早い段階でフレンチヴィンテージのお店を始められていて、私が20代の頃から通っていました。
今回、Modernism Galleryに出品いただく逸品について教えてください。
Marc Newson / Plastic Orgone Chair
マーク・ニューソンはオーストラリア出身のプロダクトデザイナー。
シドニーのアートスクールを卒業後、1980年代に東京に滞在し、IDÉEでデザイナーとしてのキャリアをスタートしました。1991年にパリにスタジオを開設。ヨーロッパのトップメーカーで家具やプロダクトモデルを制作し、世界中からオファーが舞い込む人気デザイナーとなりました。作品はMoMAやロンドンのデザインミュージアムをはじめ多くの美術館でコレクションされ、デザイン・オークションの分野で史上最高値で取引されるなど、文字通り時代を代表するデザイナーとして活躍しています。
現在は生産されておらず、国内に現存する個体も非常に少ないPlastic Orgone Chair。
1986年、当時無名だったマーク・ニューソンの名を世界に知らしめた職人によるハンドメイドのアルミ製のチェアLockheed Loungeの進化形として1993年に発売したこのオルゴンチェアも当時はアルミ製で非常に高価でしたが、1998年に自身の会社「Marc Newson Ltd」から発売されたこのプラスチックオルゴンチェアは、ローテーションモールディングと呼ばれる遠心力を応用した製法でこのユニークなシルエットを成形し、当時話題を呼びました。椅子の固定概念を覆すような独創的なデザインですが、ポリプロピレンの適度な弾力が心地良いラウンジチェアです。
この逸品との出会い、そしてあなたにとってどこがモダンデザインの逸品なのか教えてください。
ミッドセンチュリーデザインが盛り上がりを見せていた1990年代後半。
私が家具に興味を持ち始めたのもまさにその頃で、ご多分に漏れずイームズのシェルチェアを1脚買うところが私の家具屋人生のスタートとなっています。
そして当時、どのインテリア雑誌をめくっても目に入ったのがIDÉEという存在。
ミッドセンチュリーブームとは違う軸、最新のデザインで日本のインテリアを盛り上げていたIDÉEにとって、代名詞となっていたのがマーク・ニューソンのデザインだったと思います。
当時最先端のデザインだったこのチェアも、四半世紀が過ぎようとしている今、すでにモダンデザインの域に達しているように思えてなりません。私にとって1990年代を代表するモダンデザインです。
今後目指していること、展望などありましたら教えてください。
特に大きな目標というのはないのですが、今2000アイテム近くになっているヴィンテージ家具のアーカイブをこれからも少しずつ増やしていって、BUILDINGのホームページが家具デザインの辞典のようになっていけば、少し世の中というかインテリアの分野においてBUILDINGがお役に立てる部分になれるのかなと思っています。
あとはとにかく細〜く長〜くやっていくことだけです(笑)
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