お店の紹介、名前の由来、お店をはじめたきっかけを教えてください。
長野県東御市にて2016年に設立し、現在は長野市に店舗を構え、家具の修理や張り替えを主軸にモダニズム初期のものを中心としたヴィンテージ家具の輸出入を行っています。自らデザインしたプロダクトの販売や、ディレクションなども手がけています。
店名の「Ph.D.(フッド)」は、幼少期から好きでよく見ていた、BEATLES『Yellow Submarine』サウンドトラック版アニメ映画のワンシーンに由来します。
お店を始めたきっかけの一つは、日本の市場におけるアルヴァ・アアルト像に、どこか固定的なイメージや解釈がまとわりついていることに違和感を覚え、その状況を少しでも変えたいと考えたことでした。長野市に店舗を構えたことを機に、アーティストや作家とのコミュニケーションも増え、新たな領域への関心や取り組みも広がりつつあります。
どのようなヴィンテージアイテムを取り扱っていますか?
アルヴァ・アアルトをはじめとするフィンランドのデザインを中心に、1930〜50年代のモダニズム初期とその周辺期に生まれたプロダクトや作品を扱っています。
一つひとつの個体が本来もつ本質を引き出すための補修や張り替えはもちろん、前の所有者の使用の痕跡や、幾重にも塗り重ねられたペイント、その塗膜が時間とともに剥がれ、朽ちていくようなあり方も、できるだけ肯定したいと考えています。また、それぞれが生み出された歴史的背景や、互いに影響を及ぼし合っていたであろうデザイナーたちの思考をたどり、考察することも大切にしています。
これまで出会ったなかで思い入れのあるアイテムを教えてください。
アアルトのスツール60を挙げたいと思います。国内でのアアルトの価値づけや市場がまだ十分に確立されていなかった当時、事業としても設立間もなく切羽詰まった状況のなかで、国内相場の数倍という高値で落札した一脚には、特別な思い入れがあります。さまざまな方との交流が生まれるきっかけともなったアイテムです。
また、ブラジルのデザイナー、リナ・ボ・バルディのヴィンテージのジラフスツールは、当初こちらのアーカイブとして迎えたものの、海外からオファーがあり、高値で旅立っていきました。ビンテージ市場の熱量をあらためて実感するとともに、より広い視野を持つことの大切さを認識させられた出来事でした。
お店の近くにおすすめのお店や場所があれば教えてください。
長野県は自然との距離が近く、季節ごとにさまざまなアクティビティを通じて自然を楽しむことができます。キノコ採りで山の中に入ったときにふと美しい光景に出会ったり、子どもと遊ぶなかで目に入ってくるたくさんの自然の景色は、以前はどこか当たり前のものとして、ゆっくり味わう余裕もなく通り過ぎていましたが、最近はその一つひとつに心が癒やされるようになりました。
現在愛用しているモダニズムアイテムと、それに対する想いを教えてください。
Bowl
Designer : Toshiko Takaezu
友人である作家との取り組みをきっかけに関心を抱き、購入した品です。現代陶芸の歴史的な系譜をたどり、学びを深めていく入口となったアイテムでもあります。
今後目指していること、展望などありましたら教えてください。
モダニズム期初期のヴィンテージ家具の発掘はもちろん、それらを取り扱うことで培われた知識や感性や技術を元にさまざまなフィールドで表現していきたいと考えています。

Ph.D.(フッド)は長野県を拠点に活動するデザインスタジオ。アルヴァ・アアルトをはじめ、モダニズム期初期のビンテージ作品を中心に取り扱う。設立当初より糸くずや端切れなどで製作したテキスタイルを継続的に発表すると同時にさまざまな制作物も手がけアーティストや作家とのコミュニュケーションを深めている。アートやデザイン、クラフトや工業製品など、コミュニティやカテゴリを横断する活動は消費者、生産者、市場へのメッセージ性に富んだ普遍性を保ち、それらのクリエイションは自身がビンテージ家具の輸出入、修理張り替えを一貫して行うことで得た副産物や概念に由来している。
スタジオ 〒389-0407 長野県東御市羽毛山897-1
実店舗 〒380-0813 長野県長野市鶴賀緑町1607-12
tel 080-2645-5470