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Interview sememe

お店の紹介、名前の由来、お店をはじめたきっかけを教えてください。

福島県いわき市にある、現在はアポイント制で開いているスペースです。本業は損害保険の代理店なので、その事務所も奥に併設しています。もともとは趣味で集めていたアートポスターを飾れる広い空間が欲しい、という私的な欲求から始まりました。
「sememe」は、言語学で意味を構成する最小単位を指す「意義素」に由来します。ひとつの言葉が小さな意味の集積から成り立つように、私たちが何かに惹かれる感覚もまた、色や形、物質、記憶や文脈といった無数の要素の複雑な絡み合いから立ち現れるものだと思っています。同じものを見ても、見る人や、それが置かれた状況によって意味は少しずつ変わっていく。その曖昧さや移り変わりも含めて、いつもの日常をほんの少し違って見せるような、小さなきっかけになる空間が理想ではありますが、遥か遠い道のりですね(笑)。

どのようなヴィンテージアイテムを取り扱っていますか?

古いものでは1950年代から、新しいものでは2000年代までの、アーティストが展覧会の告知のために制作したエキシビションポスターを主に扱っています。いわゆる「エフェメラ」と呼ばれる紙ものの一種です。本来は展覧会が終わればその役目を終え、捨てられてしまうもの。後世に残すことを前提としていない、その儚さも含めて魅力を感じています。
美術史的に正しい系譜や同じジャンル、コンテクストの繋がりのようなことには、あまりこだわっていません。時代も国も異なるもの同士が、緩やかなグラデーションで繋がったり、ときには強いコントラストを生んだりする。そうした組み合わせによって、見慣れたものが少し違って見えたり、それまで意識していなかった感覚が呼び覚まされたりするような「異化」に面白みを感じます。
家具も扱っていますが、同じような考え方です。アートやデザイン、年代やジャンルといった境界をあまり固定せず、横断的に選んでいます。

影響を受けたデザイナーや思い入れのあるアイテムを教えてください。

Cy Twombly(サイ・トゥオンブリー)、Donald Judd(ドナルド・ジャッド)、Agnes Martin(アグネス・マーティン)が特に好きです。表現の方法はそれぞれまったく異なりますが、余計なものを削ぎ落とし、限られた要素から強い感覚を喚起するような姿勢には、どこか通底する哲学を感じています。
今回出品予定のCy Twomblyのエキシビションポスターは、とても思い入れのある一枚です。荒々しく奔放な筆致と、その周囲に広がる白の静けさ。文字とも線ともつかない曖昧さ。荒々しさと静けさ、衝動と抑制。そうした二律背反的な感覚が、一枚の紙の中に凝縮されているところに強く惹かれます。それが展覧会の告知という役目を終えれば忘れ去られていく、短命なエフェメラとして存在していることにも、ある種の感傷やノスタルジーを感じます。
今回は彼らの少し珍しいポスターもいくつか持っていく予定なので、お好きな方の手に渡れば嬉しいです。

お店の近くにおすすめの場所があれば教えてください。

いわき市立美術館がおすすめです。地方の公立美術館としては戦後現代美術を核とした本格的なコレクションを見ることができます。Cy Twombly、Yves Klein(イヴ・クライン)、Frank Stella(フランク・ステラ)をはじめ、河原温、高松次郎など、個人的にも好きな作家の作品が所蔵されています。sememeで扱っているポスターの作家や、その周辺の美術に興味がある方には、ぜひ立ち寄っていただきたい場所です。
あとは、近くに「魚栄」という鰻屋さんがあります。アートを見たあとに美味しい鰻を食べるというのも、それだけでいい一日になる気がします。夜なら「鮨いとう」という、とても美味しいお寿司屋さんもおすすめです。「常磐もの」と呼ばれる、この土地ならではの美味しい魚を味わえます。
ラーメンなら少し離れますが「チーナン食堂」。いわきに来ていただいた際には、美術館とあわせて、こうした地元のお店にも足を運んでもらえたら嬉しいです。

現在愛用しているモダニズムアイテムと、それに対する想いを教えてください。

BeoSound 9000、BeoLab 8000

Designer : David Lewis
Manufacturer : Bang & Olufsen
Era : 1990s

若い頃に見て以来憧れていましたが、数年前に入手しました。
構造や素材そのものに美を見出すモダニズムの思想を受け継いだ、素晴らしいプロダクトだと思います。アルミニウムとガラス、幾何学と反復、それらが見事な造形として結実しています。本来なら内部に隠される6枚のCDをあえて露出させ、機能そのものを視覚的な美しさへと転化したデザインには唸らされます。
Donald Juddのポスターを隣に並べると、反復や物質へのJuddの眼差しとどこか響き合う感性があるように思います。
がらんとしたシャビーな荒々しい今の空間と、BeoSound 9000の端正で無機質な佇まいがつくる強いコントラスト、そこに生まれる取り合わせの妙も気に入っています。

今後目指していること、展望などありましたら教えてください。

大それた展望のようなものは、あまりありません。本当にないんです(笑)。何年後にこうなっていたいとか、こういう方向に舵を切っていきたいというような明確な目標もなくて。先のことを決めすぎると、まだ起きていない未来に現在を合わせていくようで、少し窮屈に感じてしまいます。
それよりも、その時々で出会ったものや人、偶然起きた出来事にその都度反応しながら、少しずつ形を変えていく、その過程を感受できるくらいの鷹揚さを持っていたいと思います。あとになって、一見無関係だった出来事や寄り道が思いがけず繋がっていたと、静かに振り返ることができるような健康な心身を保っていたい、というのがわたしの目指す姿かもしれません。
もちろん、何もしないことを手放しで肯定したいわけではないので、目の前にある面白いことにはきちんと手を伸ばしていきたい。sememeがこの先どうなっていくのかは、自分でもまだよくわかりません。未決定な不確定さはそのまま残しておきたいと思っています。

sememeセミーム

主に、様々なアーティストのエキシビションポスターを取り扱う。残すことを前提とせず制作された、一過性の印刷物=エフェメラ。その儚さやノスタルジー、経年がもたらす固有の佇まいに惹かれて収集している。都内を中心に不定期で展示販売をしているが、2025年からはポスター用の広い壁を探す中で見つけたスペースを、アポイント制でオープン。あまり大仰にせず、インテリアのひとつとして日常の風景に取り入れていただきたいと考えている。

福島県いわき市
※詳しい住所はコンタクトいただいた方へご案内いたします。

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