お店の紹介、名前の由来、お店をはじめたきっかけを教えてください。
FUGLEN(フグレン)は、1963年にノルウェー・オスロで創業したカフェ・バー・インテリアショップです。名前はノルウェー語で「鳥」を意味し、「渡り鳥のように国や文化を越えて旅をし、価値を運び届ける存在でありたい」という思いが込められています。
「コーヒー」「カクテル」「ヴィンテージデザイン」の3本柱をコンセプトに、コーヒーやカクテルと共に、1940〜70年代のノルウェー製家具や照明、陶器に囲まれた空間を提供しています。2012年に東京・渋谷で日本1号店をオープンし、現在は東京と福岡で6店舗を展開中です。ノルウェー文化の魅力を発信するなかで、まだあまり知られていない自国のヴィンテージデザインを再発見・再提案していくことも、重要なミッションのひとつと捉えています。
どのようなヴィンテージアイテムを取り扱っていますか?
1940〜70年代のノルウェーを中心とした北欧ヴィンテージ家具や照明、陶器などを取り扱っています。
具体的には、Torbjørn Afdal(トールビョルン・アフダル)によるソファやテーブル、Birger Dahl(ビルゲル・ダール)の照明、Figgjo(フィッギオ)の陶器やGrete Prytz Kittelsen(グレテ・プリッツ・キッテルセン)のエナメルなど、ノルウェーでデザイン・製造されたものを厳選しています。いずれも量産されなかった希少なデザインや、無名ながら優れた職人の手による品々が多く、北欧デザインの中でも見落とされがちなノルウェーの美意識とクラフトマンシップが色濃く現れています。
これらのデザインは、FUGLENの店舗空間の一部として日常の中に自然と溶け込んでおり、実際に座ったり使ったりすることでその魅力を体感していただくことを目指しています。
影響を受けたデザイナーや思い入れのあるアイテムを教えてください。
特に影響を受けていると感じるのは、ノルウェーの家具デザイナー・Torbjørn Afdalです。彼の手がけた家具は、控えめで機能的でありながら、素材の美しさを際立たせる繊細なディテールに満ちており、北欧ミッドセンチュリーデザインの静かな奥行きを感じさせます。なかでもローズウッドを使ったベンチやテーブルは、使い込むほどに味わいが増し、FUGLENの空間に穏やかな緊張感と静けさを与えてくれます。また、FiggjoやGrete Prytz Kittelsenのカラフルでユーモラスな器やエナメル製品は、装飾やディスプレイの一部として空間に軽やかさや遊び心を添える存在です。
お店の近くにおすすめのお店や場所があれば教えてください。
FUGLENの東京の1号店は渋谷・富ヶ谷にあり、落ち着いた住宅街とカルチャーの香る街並みが魅力です。近隣には、明治神宮や代々木公園といった都心の中の広大な緑が広がり、コーヒー片手にのんびり過ごすには最高のロケーションです。おすすめの場所としては、世界的なライフスタイルマガジン「Monocle」の東京支社を兼ねた「Monocle Shop」、街とつながる新しいスタイルを提案する「TRUNK (HOTEL) YOYOGI PARK」などがあります。感度の高い書籍や雑貨が揃う「Shibuya Publishing & Booksellers(SPBS)」もすぐ近くにあり、いつも新しい発見や視点を得ることができます。ヴィンテージデザインやカルチャーに関心のある方には、発見と刺激に満ちたエリアだと感じています。
現在愛用しているモダニズムアイテムと、それに対する想いを教えてください。
Falcon Chair
Designer : Sigurd Resell
Era : 1970s
FUGLENの店舗でもよく使用しているお気に入りの一脚が、Sigurd Resell(シガード・レッセル)による「Falcon Chair」です。名前の通り、ハヤブサが翼を広げたような優雅でダイナミックなフレーム構造が特徴で、空間に軽やかな緊張感を与えてくれます。レザーのシートが吊り下げられた構造になっており、座ったときの感覚はハンモックに近く、体が包み込まれるような独特の心地よさがあります。オフィスでも導入しており、ちょっとしたブレイクタイムやリラックスした打合せのタイミングには特にその包容力に魅力を感じています。
実際にFUGLENの店舗でも多くのお客様に座っていただいていますが、視覚的な美しさだけでなく、座ったときの驚きや発見があるという点でも、ノルウェーデザインの奥行きを象徴するような存在だと感じています。
今後目指していること、展望などありましたら教えてください。
今後はさらに国内外での新店舗展開を進めていく予定です。コーヒーやカクテルといった切り口でブランドを知ってくださる方が多い一方で、私たちの根幹にあるもうひとつの柱、「ノルウェーのヴィンテージデザイン」の魅力も、これから改めて伝えていきたいと考えています。北欧デザインの中でもノルウェーは比較的知られていない存在ですが、1940〜70年代に生まれた家具や照明、工芸品には静かで奥行きのある、それでいて力強い美しさが宿っています。私たちの空間づくりや編集的な視点を通じて、そうしたノルウェー独自の文化的価値を再発見し、再提案していくこと。それをコーヒーやカクテルのように日常の中で自然に出会えるものとして、多くの方々にお届けしていくことが、今後の大きなチャレンジだと考えています。
ノルウェー・オスロ発のカフェバー兼インテリアショップ。「コーヒー」「カクテル」「ヴィンテージデザイン」をコンセプトに、1940〜70年代のノルウェーヴィンテージ家具と共に、コーヒーやカクテルを提供する空間を展開。ノルウェーデザインの再発見・再提案の試みとして、今回初出店。
〒 151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-16-11
tel 03-3481-0884