お店の紹介、名前の由来、お店をはじめたきっかけを教えてください。
このDawnerというお店をはじめる前にも、同じ北欧ヴィンテージの業界で10年近く働いてきました。その中でヴィンテージ家具のレストアという作業は一つ一つの製品の足跡を辿る作業に等しく、骨の折れる作業も多いがその魅力は尽きないと感じています。
特にモダンデザインにおいては一つ一つの意匠に作者の意思や意図、もしくは願いのようなものをも想像することができるし、また長く愛されてきた製品にはそれぞれ生活者たちの日常がしっかりと刻まれています。
これらはもちろん私の想像の世界であって事実ではないかもしれません。それでもこのレストアという作業を通して先人達から多くを学び、そしてそれら一つ一つの製品を媒体として多くの方と共感をしていきたいと思っています。
お店の名前Dawner(ダーナー)は英語の「Dawn」に由来します。
何かの辞書を引いていた時に「Dawn=太陽が昇る前に最初に現れる一筋の光」と書いてあったのを見つけて、その詩的な一文が気に入りました。また動詞としてstartやbeginのような用法があるそうで、動作の主体となる「er」を語尾に付けて造語としました。古い製品を扱うが新しい何かを導けるような存在を目指す、という自分自身を鼓舞するお店の名前です。
どのようなヴィンテージアイテムを取り扱っていますか?
取り扱う製品は主にデンマークの1950-60年代頃に製造されたヴィンテージ家具を中心にお部屋を飾る小物などもセレクトしています。デンマークをはじめ北欧デザインは機能的・実用的・合理的でありながら、クラフトマンシップを随所に残して人の手の通った温もりをきちんと宿している点に魅力を感じます。
個人的にはデザイナーズの製品も好きですが、たとえ無名であっても造りの良い製品が多いため作者やブランドにこだわることはしていません。長い時間を愛されてきた製品にはそれぞれに魅力があります。そしてたくさんの人たちの関りがあったから今こうして私たちがヴィンテージとして楽しめているのだと想うと、一つ一つの出逢いや巡り合わせこそを大切にしていきたいと考えるようにもなってきました。
またアイテムの特徴というよりもお店のこだわりとして、店頭に並ぶ製品は全て私が手を掛けているということ。そのため店頭に並ぶ製品やご紹介させていただく製品は基本メンテナンスを済ませた状態で日頃からご案内させていただいております。修理の技術に関してはまだまだ未熟な点も多いですが、一つ一つの製品については誰よりも把握をしてその魅力をお伝えできるように努めています。
影響を受けたデザイナーを教えてください。
特定のデザイナーへの信奉はないつもりですが、デンマークのデザイナーHans.J.Wegner(ハンス・ウェグナー)とBørge Mogensen(ボーエ・モーエンセン)の2人にはとても心を惹かれます。クリントに学んだリ・デザインの手法や、家具職人としての視点、後進の育成や多くの家具メーカーとの協力関係など様々な媒体で既に語られているエピソードは多いですが、彼らがデザインした製品に実際に触れてみるとそれらのエピソードが決して大袈裟なモノではなくてストンと腑に落ちる。その大袈裟でないところが特に好きなのだと思います。
家具のレストア作業の中でも個人的にペーパーコードの座面を張る作業が大好きで、それはその作業の間とにかく無心で一つの椅子と向き合っていられるからなのですが、彼らの代表作CH24やJ39と向き合う時間はもう幾度も経験していますがその度に発見や感じることがあって至福です。
お店の近くにおすすめの場所があれば教えてください。
お店のある西荻窪という街は個人経営のお店が多く集まっていて、どのお店も店主の方々の趣向や個性が光る素敵なお店で溢れています。骨董や古道具、古本などを扱うお店も多く、至る所に画廊やギャラリーが点在していたりして、街歩きの楽しいエリアだと思います。地域と商店との繋がりも強く、街ぐるみの催しもあったりして、どのお店がおすすめというよりは西荻窪という街全体がおすすめです。
現在、愛用しているモダニズムアイテムとそれに対する想いを教えてください。
カップ&ソーサー「Mexico」/ Jens.H.Quitgaard / Bing & Grondahl / 1960’ / デンマーク
「全ての製品は機能的であると共にスタイリッシュであるべきだ」というクイストゴーの哲学に加えて、この幻想的でどこか温かな雰囲気が共存した世界は眺めていて飽きません。
個人的なことですが、昔コペンハーゲンの蚤の市で顔見知りのショップのお兄さんが大きな家具を運ぶのに難儀していたので手伝ったところ、そのお礼の印としてプレゼントしていただいた思い出の品でもあります。普段は戸棚の一番目立つところに置いて主に鑑賞しているだけですが、ちょっと特別な時に◎と考えているだけでもワクワクさせてくれる私にとっての宝物です。
今後目指していること、展望などありましたら教えてください。
大きなことよりも、一日一日をきちんと積み重ねて自身の糧としていきたいです。
チャレンジしたいことは、家具の修復過程において発生する端材や廃材の取り扱いを見直していきたいです。
また、家具修復に必要な素材なども固定観念に縛られずに、環境やこれからの時代を見据えて最適なものを選んでいく努力をしていきたいと思っています。
北欧ヴィンテージを中心に扱う西荻窪の小さな家具店。
その時々の出逢いや巡り合わせを大切にして心惹かれるアイテムをセレクトしている。特にアノニマスのデザインが好きで、修理/メンテナンスの過程ではそれぞれの製品が関わってきた作り手や生活者たちを想像しながら、モノと共にその想いを次代へと引き継いでいくことを目指している。
〒168-0081 東京都杉並区宮前3-35-16 1F
Tel 03-6874-3228